2020/07/01

[Japanese] GBS-8200アップスキャンコンバータを改造して画質向上

はじめに
  20年ほど前から世の中で出回っているアーケード基板向けの中華製アップスキャンコンバータ GBS-8200はRGB環境を持ってる方なら見たことや使ったことがあるかと思います。これ値段も2千円程度で、通販で購入できますが性能がいまいちでして、画質のボヤけと遅延が長いのでアクション・格ゲー・音ゲーなどには向いていませんでした。なので気になるのであれば今までは低遅延かつ高画質を求めるためには高い機材に買い直す必要がありました。

 ところで海外ではgbscontrolといった名前の高性能化改造が数年前から流行っていました。この中華製のコンバータをarduino互換ボードを使って改造をすると、画質と遅延がXRGB並み…までは言い切れないがかなり実用的に使える方法が公開されました。
改造をすると、こう変わります。

解像度:最大1360x768→最大1920x1080
遅延:ソースが240pの場合は3~5フレーム→無遅延 (厳密には数ライン程度)、
   ソースが480iの場合は3~5フレーム→1フレーム
240p−480i転換時の表示遅延:瞬時表示(無改造も同一、参考にXRGB-mini, OSSCは数秒)
スケーリング: 800x600, 1024x768, 1360x768 → Line 2x, 3x, 4x, 720p, 1080p
deinterlace処理:信号問わず強制 top-bottom field blend
        →interlaced信号のみ「Bob」or「Adaptive motion deinterlaced」
       つまり、2フレーム透明表示などで発生していたチラツキが
       なくなり、超キレイに表示できる

チラツキがなくなり、GBS-8200自体のノイズが少し付いたXRGB3級の画質に変わります。2013年当時海外ではXRGBのようなゲーム向けの高性能アップコンを手に入れにくい事情(今になってはOSSCで代替可能)もあって、安価で高性能アップコンを使う場合は改造して使えるこの方法がRGBに興味ある方の中では話題になっています。ファームウェアもオープンソースで今も続いて改善が進んでいます。そういうことから、この記事はGBS-8200の改造方法とその結果について紹介しようと思います。英語が読める方はyoutubeや英語で書いた記事がたくさんありますのでそちらも参考してみてください。
 
まず改造のメリットとデメリットをまとめました。

メリット
1. はんだごてさえあればアップコン購入含めて3000円で高性能アップコンに変身する
  (2022年最近では秋葉原や基板専門通販なのでも買うだけですぐ使えるモジュールを
  3500~4000円程度で販売しているようです)
2. 上で説明した通り超低遅延
3. GBS-8200に付いている可変抵抗でJAMMA信号を減衰できるので楽
4. ウェブブラウザーで設定保存変更可能 (出力解像度、画面ズレ補正、色明るさ調整…)
5. ブラウン管寿命で液晶に替える際に数が多ければ多いほどやる価値はある
6. RGB明るさ自動調整してくれる(オプションでOFFも可)

デメリット
1. 改造なのでちゃんと枠作って固定しないと形が雑になる
2. 制御改造だけではノイズが消えないので、コンデンサ交換・脱去などの追加改造必要
3. 現在24k信号を扱えない 2022/10現在24khzも映るようです
4. ヒートシンクが付いたDSPチップの発熱がヤバくなる

これぐらいでしょうか。あといくつか作ってみた後の感想と注意点があります。
− ブラウザで設定は変えますが、業務用・ゲーム用機材の方が使い勝手は良い
   設定を頻繁に変えず固定したまま使うなら問題ないと思う
− GBS-8200のHDMIバージョンは結構クセがあってLM1881を通さないと
   相性で映らない場合があり

GBS-8200を持ってない方は中古の業務用機材やゲーム用機材を買った方が使い勝手は絶対いいので、無理に買って改造する必要はありません。ヤフオクやメルカリで数千円出せば中古のいい機材を買えます。液晶でゲームする場合は安GBS-8200改造は高性能なのでお勧めします。また、機材の仕様上少しノイズが乗りますが気にしないのであれば録画配信用アップコンとしても使えます。上記内容を踏まえて改造に興味がある方は下の内容を見て是非試してみてください。あと当たり前ですが日本人がよく言ういつのも「壊れても自己責任で」はお忘れなく。まぁ激安の中華コンを買った時点でメーカーのサポートなんかはないと思いますが...

参考にいっておきますが、メインのDSPチップ TVIA-5725はFHDまでら結構高性能チップであって、元々アーケード基板用ではなく、AV装備向けの用途のようです。他はさておき240p-480iの転換が早いのはこのDSPチップの処理能力のお陰かなと個人的には推定しています。

必要材料
ハードウェア
− はんだごて、鉛線、リード線
− USBポートが付いているESP8266ボード (旧ファームはArduino Uno/Nano/Mega)
   またはnodemcu1.0, ESP-32系
− GBS-8200シリーズ系アップコン、I2C通信ピン(SDA・SCL)があればなんでもOK
   なるべくノイズが少ない「GBS-8200 V4」, 「GBS-8220 V3」の方が良いです。
   後続モデルは更に製造原価削減のためか、設計上望ましいコンデンサと異なる
   容量のチップが実装されていてノイズ酷くなっています。
  詳しくは下のリンクを参考して改善もできるようです。
   https://github.com/ramapcsx2/gbs-control/wiki/Hardware-Mod-Library
− 5V 2A出力 電源アダプタ1個もしくは1A出力 2個。USB電源で繋げても良い
− ジャンパー設定用ピン (IDE HDDなどでよく使ったやつ)
− (ケーブル化する場合) I2C通信用 JST XH 4p コネクタとそのコンタクト
− (家庭用ゲーム機向け) 自作RGB21メスーRGBS 5p オス ケーブル
− (同期信号が汚い基板向け) LM1881回路

**2022/10現時点では全てのコンデンサ改造+arduino付のGBS-8200セットをケース付きで販売しているので、すぐに使いたい場合はそちらを購入することもありかもしれません。ただしそれなりに値上がります。

ソフトウェア
− githubソース リンクのGithubで「Clone」ボタンをクリック
   旧ファームウェア用ソース_gbs-8200_arduino_mega_uno_nano_firmware
  ダウンロード後フォルダ名を必ずgbs-control-masterからgbs-controlに変更

− Arduino IDE 公式ホームで自分のOSに合わせてダウンロード後インストール
− NodeMCU ESP8266のUSBシリアルドライバ(CP210xもしくはCH340G/CH341)
   面倒くさかったら両方インストールをお勧め CP210xCH340G/341
− ESP8266ボード情報をarduino IDEの「ボードマネージャー」でインストール

Install ESP8266 Board add-on in Arduino IDE open preferences Install ESP8266 Board add-on in Arduino IDE enter URL

   http://arduino.esp8266.com/stable/package_esp8266com_index.json

Install ESP8266 Board add-on in Arduino IDE Open boards manager
Install ESP8266 Board add-on in Arduino IDE search ESP8266

ボード種類によるUSBシリアル通信チップのドライバ選択
NodeMCU V2 - CP2102 chipNodeMCU V3 - CH340G chip

      NodeMCU V1              NodeMCU V1とV3


配線
ESP8266  −  GBS-8200
D1   − SCL
D2   − SDA
5V   − VCC (別途電源にする場合は配線する必要なし)
GND  − GND (別途電源にする場合は配線する必要なし)

(参考) 旧ファームウェアの場合
Arduino − GBS-8200
A4   −  SDA
A5   −  SCL

上下左右調整ボタンの上にある2ピンをジャンパーピンでショートさせる

Wifi SSID : gbscontol
Wifi password : qqqqqqqq
ソース修正して自分なりに設定もできます。

初期ウェブ管理ページアクセスアドレス:gbscontrol.comかgbscontrol.local
バージョンによって変わるようなのでソース中身を読むか両方試してみてください。
最初にスマホでこのSSIDにアクセスする場合、インターネットが出来なくなるため
自宅の無線ルーターにアクセスさせる形でしておいた方が便利です。

Arduino nanoで作った改造版の完成写真 (旧ファームウェア使用)

 私はGBS-8200 V4 の2009年生産品とユニバーサル基板にハンダ付けしたArduino Nanoで完成しました。写真ではブラウザーでの設定機能がない単純バージョンなので旧ファームウェアを使っています。個人的にはこの旧バージョンが好きです。単純にアップスキャンしてくれて、触ることもなくで楽です。
 電源はアップコンと制御ボードの間をVCCとGNDで繋いでいるのであればESP8266にUSB電源を供給するだけでOKです。ただし、その場合は2A出力の電源を使わないと電力不足でまともに動かない場合がありますのでご注意ください。電源不足時ESP8266のwifiが繋がらない現象がよくあるので、うまくいかなかったら電源を別々で繋げてみて下さい。
 この改造をした後は、左のヒートシンクが付いたDSPチップの発熱がヤバイので触る時は気をつけてください。知り合いのゲーセンで1年以上付けっぱなしにしていますが、壊れたとかは聞いたことないので多分大丈夫かと思いますが、気になる方はファンを付けるのもいいかもしれません。ESP8266を外して改造前に戻すとDSPの発熱も元通りに下がります。




結果
以下の構成でテストしました
基板や家庭用ゲーム機 RGBS出力 >> GBS-8200改 >> SC-512N1-L/DVI
改造前後を比較するためにマイコンソフトSC-512N1-L/DVIでキャプチャしました。

1. 彩京 STRIKERS 1999 アーケード基板
 240pを「ラインダブラー」から更に2倍の「ラインクワッドラプラ(line quadrupler/4x)」で1280x960pにアップスキャンして、自機をホーネットのボム演出で改造前後を比較しました。ボム演出は240p出力のレトロゲームでよく見れる1フレームごとピカピカして透明のように見せる手法を使っています。改造前はこの透明効果の2フレーム演出が変な直線ノイズついてしかも不透明になってしまいました。これは240pや480iを関係なく強制的にblend方式のdeinterlaceを行われるためです。改造後ではプログレッシブ信号は余計なdeinterlaced処理ぜずbobでdeinterlace処理の上でアップスキャンするので正しく透明のままです。下の改造前写真は1360x768に設定したため、アス比が合わない状態です。スミマセヌ


改造前のボム演出. 240p → 1360x768 出力. top-bottom blendフィルタで直線ノイズ発生

改造後 ボム演出. 240p→ライン 4x 1280x960 出力. 正しく2フレーム透明化

改造後 デモプレイのスクリーンショット


2. Playstation2 Beatmania IIDX、怒首領蜂大往生、
    SEGA AGES 2500 ドラゴンフォース1
 PS2のRGB出力の改造前は機材間の相性が悪かったのか、キャプチャすらできなかったので写真はありません。改造後のbob deinterlacedモードはインターレース出力ゲームはXRGB3のラインダブラーの結果と同様に若干上下にブレます。これはフレームバッファを使用するXRGB3(ラインダブラ除く)、フレマイのような映像のクォリティを優先する方法と低遅延を優先するがブレる方法の兼合いなので仕方ありません。一方でAdaptive motion deinterlacedモードはブレもなく出力できますが、遅延が若干増えるようです。それても改造前は体感3~5フレームよりかなり改善できました。 画面が少し暗いのはGBS-8200にアーケード基板向けの500Ω可変抵抗をうまく調整していなかったためです。明るさ調整するためにはカラーテスト画面で見ながら抵抗をうまく75Ωに調整するか、75Ω固定抵抗に取り替えた方が良いですが、汎用性を考えてこのまま使っています。

改造後 Beatmania IIDX USA版 480i→1440x960p 出力 #1


改造後 Beatmania IIDX USA版 480i→1440x960p 出力 #2

改造後 怒首領蜂 大往生 240p->1280x960p 出力

改造後 PS2 SEGA AGES 2500 ドラゴンフォース 480i->1280x960p60 出力


 怒首領蜂 大往生もボムで透明演出を使っているので、確認してみたらちゃんと表示してくれていました。下にある動画で、2ステージボス直前にボムを使用していますのでご確認ください。途中で真っ白になった時に映像が割れる現象は抵抗つまみで調整したらその現象はなくなりました。これを見ている他の方はもしそれでも直らなかったらSYNCとGNDの間に470Ωを付けてみてください。特にソースの同期信号が2.0V以上のTTLレベルだと、5Vの場合もあるので3.3v以内で調整するために470Ωが必要です。
 遅延の話ですが、知り合いのゲーセンで低遅延液晶モニターをつけたビューリックスの中に、この改造版を付けて大往生ブラックレーベル稼働して性能を試す機会がありました。ガチのプレイヤーが2-5まで進んでから言った感想は、レバーとボタンの入力遅延は特にブラウン管と差を感じなかったようです。たった一人の感想ですが、一瞬の操作ミスも許さないケイブ2週の話なのでモニター遅延さえなければ実用レベルと信じていいでしょう。


PS2 怒首領蜂 大往生 240p->1280x960p60 スーパープレイデモ (firmware 2018/1/15ver.)


 PS2版は横画面で480i、縦画面で240p出力になりますが、出力モードが切り替える際には殆どの高価アップコンは数秒の間暗転で見えなくなります。しかし、驚くことにこの改造版ではそのような現象が見えないほど表示が早いです。改造前も元々速いものでした。下の動画がその結果で3000円がうん万円の機材より優秀でびっくりしました。出力モードが頻繁に変わるゲームに向いていると思われます。余談で虫姫さまは何故か480iのみで、どうしても1フレーム遅延は発生してしまうので残念です。


改造後 PS2 怒首領蜂 大往生 240p->1280x960p  240p-480i 切り替え時の映像 



終わりに
 かなりコスパいいものではないかと思います。もしGBS-8200を持っているのであれば1000円ぐらいの材料代だけで改善できると思います。フレームマイスタも生産終了で中古でも高いのと, OSSCも2万円はするので、こういう方法も使って見るのもいいかと思います。